KLab社長 真田哲弥のブログ

KLab株式会社(クラブ)社長 真田哲弥が経営者対談を行い、ビジネスアイデアをお伝えするブログです。

カテゴリ: ビジネス対談

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今回の対談相手はリーウェイズ代表取締役社長の巻口さん。AIによる将来の資産価値(FV)算出で「表面利回りと気合と根性」という旧来の不動産ビジネスの変革に邁進する不動産テックベンチャーの経営者です。 まずは
リーウェイズの「Gate.」のサービス解説動画をご覧ください。



◆不動産取引プラットフォームのビジネスモデル

巻口 当社は2014年2月に創業した、AIとビックデータによる不動産取引プラットフォーム、「Gate.(ゲイト)」を運営する不動産テックベンチャーです。 5,000万件を超える物件データを独自収集し、そのビッグデータを活用して不動産投資の分析シミュレーションを行う人工知能を独自開発。高精度の収益分析のもとで投資用不動産を取引できるさまざまなツールを提供しています。 最大の特徴は、現時点の取引相場価格を提供するだけの従来の不動産サービスとは異なり、物件の将来の資産価値(FV)を人工知能によってシミュレートできること。物件情報の検索やAIによる簡易シミュレーションは無料で利用できます。 ユーザーは不動産投資家、物件を仲介する不動産会社、不動産に融資をする金融機関を想定しています。
真田 投資家と不動産会社をマッチングする不動産取引プラットフォームということですが、御社のビジネスモデルは「売り方」と「買い方」、どちらから収益を得ているんですか。
巻口 物件を提案する不動産会社と融資をする金融機関からです。収益源は、Gate.が提供する分析ツールの利用料、それと成約時の手数料。ちなみに手数料は、成約時の仲介手数料の20%です。
真田 なるほど。とても将来性があるビジネスだと思います。
◆プラットフォーマーの前に「ファーストパーティー」としての成功を目指せ!
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巻口 当社は投資用不動産取引のプラットフォームビジネスを展開しているわけですが、プラットフォームビジネスで成功するコツがあれば教えてください。
真田 過去成功したプラットフォームには共通項があります。それは、サードパーティーではなくプラットフォーマー自身がファーストパーティーとしてプラットフォームを牽引していることです。 当社が属しているゲーム業界を例に解説しましょう。 DeNAさんは「モバゲー」、GREEさんは「GREE」というゲームのプラットフォームで成功しました。しかし、両社はもともとプラットフォームを提供しようとしていたワケではなく、自社のゲームを開発していました。 自社開発ゲームが大ヒットしたことによりユーザーが増え、サードパーティーに開放し、結果的にプラットフォーム化されたのだと思います。 当時、「モバゲー」「GREE」に続く3匹目のどじょうを狙うゲームプラットフォームがたくさんでき、当社にも「ゲームを出しませんか」と言うお誘いをいただきました。しかしお断りしました。 「モバゲー」の場合はDeNAさんの自社タイトル『怪盗ロワイヤル』がひとつの指標となり、目標や手本となりました。しかし、そのようなヒット作がなくてユーザーがいないプラットフォームには魅力はありませんでした。 企画書にどれだけ書いても、営業マンがどれだけ雄弁でも、実績・実例がなければ、説得力がない。この実績・実例をプラットフォーマー自らつくるのが、ファーストパーティー戦略の基本。 任天堂におけるマリオ、マイクロソフトにおけるExcelもしかり。まずファーストパーティーのヒット作がプラットフォーム全体の集客力をつくる。その集客力に惹かれてサードパーティーが集まってくる。 そのサードパーティーによって賑わいと多様性、網羅性が生まれ、ますます集客力が増す…という好循環が形成されることによって、プラットフォーム全体が成長していく。これが理想形ですね。
◆実は大きい“ファーストパーティー”収益 4【前編】真田代表
真田 もうひとつ、プラットフォームビジネスで成功するためのポイントがあります。それはプラットフォームとしての収益とファーストパーティーの収益のバランスを上手く取ることです。 プラットフォーマーは、ファーストパーティー収益によって利益が最大化されるんじゃないかな。自社プラットフォームで自社商品って、控除されるものがないから、実はすごい利益率が高い。 プラットフォームビジネスは寡占できるまでの間、普及を優先するからは利益率が低いことが多い。その時期にファーストパーティー収益を出せれば、プラットフォームは素早く立ち上がる。結局はバランスと組み合わせの問題かな。 Amazonの場合だと、あまり数が出ないロングテール商品はサードパーティーが販売することによって品揃え、網羅性を担保。よく売れる売れ筋商品は自社で販売。自社商品が一番上に表示される。この部分がファーストパーティー収益でAmazonの場合は、ここが一番大きい。 そして、もっと売れる定番商品はPB(Private Brand)をつくり、メーカーとしての収益まで持っていく。まあ、ここまでできるのは、Amazonが圧倒的強者で、立場が強いからだけど。 美味しいところはしっかり自前で抑える。これは結構、重要なポイントだよね。戦略として持っているだけで、会社全体の売上や利益率が大きく変わると思いますよ。
巻口 当社の場合、不動産会社から“競合相手”と警戒されることを避けるため、自身はプレーヤーにならずに、参加企業から成功事例を出すことでGate.を盛り上げようとしています。
真田 もちろん、スタートアップだし、立場が強いワケではないし、おっしゃる意味はわかります。スタートアップで弱いからこそ、警戒されない時期だという見方もできます。 なにも自社直営じゃなくてもいいわけで、子会社だったり、名前を変えたりして。そうして「Gate.を使えば儲かります」という見せ方を是非、考えてみてください。
巻口 なるほど。勉強になります。

今回の対談相手はM&AクラウドCOOの及川厚博さん。人口知能を使ったユニークなM&Aマッチングビジネスを展開しているスタートアップ経営者です。独自スキームを詳しく解説したサービス概要動画も御覧ください。
◆斬新なアイデアのM&Aマッチングのプラットフォーム
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及川
当社はM&Aマッチングのプラットフォームを運営しているスタートアップです。創業は2015年12月、サービスは昨年6月にローンチしました。

特徴は「会社を売りたい人」は匿名性を保ったまま、人工知能によって売却可能価格を算定し、M&A業者の比較もできる点です。最終的には買収したい企業とのマッチングまでできます。

売却を希望するユーザーは、これらの機能・サービスを全部、無料で利用できます。「誰にも知られずに買収先を集めることが可能」。これが当社のキャッチフレーズです。
 
真田
とすると、買収したい側からマネタイズしているわけですか?
 
及川
はい。M&Aが成立したら、M&A仲介会社から仲介手数料の30%をいただきます。
 
真田
マッチングビジネスには違いないんだけど、「片一方」だけを集めてマネタイズしている仕組みなんですね。

マッチングは「売り手」と「買い手」の両方がいないと成立しません。だから、フツーは「売り手」と「買い手」の両方を集めようとします。

でも、及川さんは「買い手」は自分で集めようとせず、片一方の「売り手」だけを集め、既存のM&A仲介業者を活用し、成功報酬をレベニューシェアしようと。そういうことですね。

ぼくがM&Aのマッチングビジネスを立ち上げるとしたら、同じ仕組みにするでしょうね。なぜなら、その方がスタートアップが成長しやすいですからね。
 
及川
なぜですか。
 
真田
では、まずマッチングビジネスの概念から説明しましよう。

マッチングビジネスとは、言うまでもなく「売り手」と「買い手」の間に入って売買の手数料やシステム利用料・広告掲載料などを得るビジネスモデルのこと。たとえば、AirbnbやUberはシェアリングエコノミーと言う文脈で語られることが多いけど、この2社も典型的なマッチングビジネスです。

シェアリングエコノミー関連以外にも、昔からリクルートが手がけているような不動産、中古車、人材などもマッチングビジネスの代表例ですね。

AirbnbやUberが成功して以降、日本でも類似のシェアリング型マッチングビジネスが雨後のタケノコように現れました。しかし、順調に成長している会社は多くありません。その理由を考えてみると、面白いよ。

◆『ヤジロベエのジレンマ』
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真田
マッチングビジネスが成長できない、または成長に時間がかかる1番の理由は 『ヤジロベエのジレンマ』を打破できないことですね。

『ヤジロベエのジレンマ』を知らないの?そらそうだ、ぼくが作った造語だから(笑)。
ヤジロベエは知ってるよね? ヤジロベエのどちらか一方に重りを乗せると倒れてしまう。だから重りを乗せることはできません。それと同じように、「売り手」も「買い手」も小さい規模でバランスしていて、小さい規模から抜け出せない状態を指しています。

「買い手」が少ないから「売り手」が集まらない、「売り手」が少ないから「買い手」が集まらない。「買い手」が少ないのに「売り手」を集めると「買い手」から不満が出て「買い手」は抜けていく。マッチングビジネスのスタートアップが成長するためには、このヤジロベエのジレンマを打破しなければなりません。

でもオーガニック獲得だけではこのジレンマから抜け出せません。だから、何らかの戦略が必要になります。

『ヤジロベエのジレンマ』を打ち破る戦略はいろいろあります。最もシンプルなのが「初めから片方しか集めない」と言う戦略。M&Aクラウドの及川さんはまさにこのやり方ですね。
中古車流通の場合の買取専門業者や、賃貸不動産の客付けを専門に行う賃貸仲介会社などもこれにあたります。


中古車の買取専門店の例で説明しましょう。
買い取った中古車を自分でお客様に販売する中古車店をやっていたとしましょう。例えば、10人のお客様が中古車を売りに来たとしても、買えるのは2~3台かもしれませんね。なぜなら売れそうな台数しか買えないからです。これが『ヤジロベエのジレンマ』です。
それに対して、買取専門店なら10台全部買えます。買った中古車が売れそうかどうかなんて考えない。全部買って、業者間オークションに全部流すだけだから。

そう、買取専門店のポイントはオークションと言う既存の流通の仕組みを活用していることなんですね。M&Aクラウドの仕組みも同じですね。集めた売り手の会社を既存の流通の仕組みであるM&A仲介会社にマッチングするわけですから。
「売り手」と「買い手」両方を集めようとすると、初期は手数料無料にしてどちらかを集めるなど、多くの場合、黒字転換するまでに時間がかかります。両方を集めるとなるとマーケティングコストもかかります。

それに対して、片方を既存流通に依存すると、初期から粗利を上げることができます。だから黒字化が早いんです。

一方で、買取専門の場合、両手で利益をあげるビジネスに比べて利益率が低いから、数をこなす必要があり、「売り手」を大量に集められる戦略がなければ成立しません。及川さんのM&Aクラウドの「売り手」を大量に集めるための戦略とは、匿名性の確保や人工知能による売却可能価格算定なんでしょうね。
 
及川
なるほど。いま自分たちがやっているビジネスに、自信をもっていいんですね。
 
真田
目の付け所は正しいと思います

◆「スタートアップ」はバブルの様相
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及川
ところで、業績のよくない会社ではM&Aの成約金額が抑えられるため、「より成約時の金額が高いスタートアップやITベンチャーの集客強化」の検討が社内で議題にのぼっているんですが、それについてはどう思われますか。
背景には、ここ最近、M&A仲介会社のIPOが続いているなど、この業界は急成長していますが、事業承継型のM&Aは競争が激しくなってきているほか、将来展望が描けず、業績のよくない「売却希望」が増える傾向にある、ということがあります。
 
真田
ぼくはそれにはあんまり賛成できないな。理由はふたつあります。

まずひとつ目は、近年、スタートアップやITベンチャーの企業価値(算定価格)が高騰してバブル的な様相を呈していることです。

昔に比べるとスタートアップの企業数はずいぶん増えました。それ以上にVCの数とベンチャー投資の資金が増えました。スタートアップ、ベンチャーが成長資金を獲得しやすくなっているという点ではとても良いことです。

でも、資金の供給が需要を上回ったことによって、スタートアップ企業の時価総額は実態の価値より高くなってしまった。それで「売上は5,000万円、まだ赤字だけど時価総額は5億円」みたいなことが起こっています。

スタートアップの数も増えたし、スタートアップ情報専門のメディアができたりして情報も豊富になりました。だから、流行のビジネスモデルにたくさんのスタートアップが群がっているような状況です。

実際、キュレーションやシェアリングエコノミーといった流行の領域には、似たような企業がたくさんありますよね。

でもインターネットのビジネスで利益が出るのは上位の3社くらいまで、です。残りの会社の経営はとても厳しい。そういう意味で、事業承継型よりもIT系のスタートアップの方が業績の悪い会社が売りに出る率は高いんじゃないのかな。

だけど、その割に価格が高止まりしてしまっています。VCも出資した時よりも低い価格に下げて売りたくないですから。そうなると、IT系のスタートアップは買収してもなかなかペイしません。だから、買える会社は限られてくる。もともとユーザーやPVがあって、それを活かせる会社とかね。

こうした状況から考えると。確かにIT系のスタートアップの方が成約すれば成約金額がデカいと思います。けど、成約率は低いんやないかな。
(後編に続く)  
 

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